医療的ケア児を育てながら在宅アパレルデザイナー。自身の経験から生まれたバリアフリー服への想い

医療的ケア児を育てながら在宅アパレルデザイナー。自身の経験から生まれたバリアフリー服への想い

育児の「こんなのあると助かる!」を実現する子供服ブランド「アルトタスカル」。
担当デザイナーの林真奈さんは、医療的ケア児のお子さんを育てながらリモートで働く2児の母でもあります。
当事者として、デザイナーとして、アルトタスカルの商品にかける想いを聞きました。

林さんと、医療的ケアを必要とするお子さん

自身の経験から生まれた「ちいさなふく」「おしゃれバリアフリー」

林さんは、ランジェリー、レディース、メンズなどさまざまなジャンルの服のデザインを手がけてきたアパレルデザイナー。
現在勤めている株式会社オーパスに転職後、女の子の赤ちゃんを授かりました。

「長女は生まれてから18トリソミーという病気だとわかり、すぐNICU(新生児集中治療室)に入院しました。面会に通っていると、他のお母さんたちと『赤ちゃんに合うサイズの肌着がない』と話題になりました」

NICUには小さく生まれた赤ちゃん(低出生体重児)が多く、一般的な新生児サイズ50cmの服では大きすぎてぶかぶか。
「そのことを社長の参鍋に話すと新生児担当の部署に交渉してくれて、通常サイズの服を作るときに抱き合わせで小さいサイズも製造できることになりました」

低出生体重児向けの40~45cmの肌着を発売すると、完売。たしかにニーズがありました。

林さんが提案した小さい肌着がもとになって、アルトタスカルの「ちいさなふく」ができました。

「小さい肌着作りに関わったのがきっかけで、次女の育休から復帰するときにアルトタスカルのチームに参加しました。そこで、私から医療的ケア児向けの服『おしゃれバリアフリー』を提案しました」

赤ちゃんの服は前開きやロンパース中心ですが、大きくなると90cmを境に上下が別になったセパレートの服ばかりに。

「かぶりのトップスや股下が開かないボトムは、長女のような医療的ケア児や体がうまく動かせない子には着せにくい。大きなサイズのロンパースや、セパレートでも前や股下が開く服があったらいいなと思っていました」

これまでにも医療的ケア児向けの商品は販売されていました。
でも、周りに聞くと価格がネックで「よほど気に入ったデザインでなければ買えない」「既製品をリメイクしている」というのが実情。

「ターゲットが少なく特殊な仕様だと価格が高くなるのはわかります。でも、せっかくいいものを作っても、買ってもらえなければ着てもらえません。普通の子供服ブランドと同じくらい気軽に、洗い替え用に何着もまとめ買いできる価格で作らなければと思いました」

単独で作るのは難しくても、小さな肌着を作ったときのように自社の他の企画に相乗りするなどの方法でコストを抑えられるかもしれない。
こうして生まれた「おしゃれバリアフリー」の服は1000円台からのお手頃価格。色や柄のバリエーションも豊富です。

アルトタスカルの「おしゃれバリアフリー」シリーズ。

障害児を育てながらの在宅勤務、助かるけれど困っていることも

在宅勤務をする林さん

林さんは出社せず、在宅のフルリモートで働いています。

「長女は4ヶ月でNICUを退院できたものの、在宅で医療的ケアが必要だったので出社して働くのは難しい状況でした。当時は今ほどリモートワークが一般的ではありませんでしたが、幸い在宅での勤務が認められました」

家庭との両立ができて助かる反面、苦労することもあります。

「何をするにも時間がかかってしまいます。生地見本などの資料が全部会社に置いてあるのですぐ見ることができず、試作品も会社を経由して転送されるのでタイムロスがあります。同じ事務所で隣にいれば10秒で済む説明も、文章にしたり、図や写真を用意したりしなければならず大変です」

そして障害児ならではの「小1の壁」も。
「長女は来年から小学生なので、現在預けているデイサービスが利用できなくなります。預け先、預かり時間、学校への付き添い、病院や送迎の調整など、考えることがたくさんあります」

病気や障害のあるお子さんのいる家庭では、保護者の就労が難しいという問題があります。
会社の理解を得られている林さんにも、困っていることがありました。
働きたい保護者へのサポートや選択肢の必要性を感じます。

日々悩みながら、できることの積み重ね

大きなサイズのロンパース肌着(90-160cm)。袖の有無、ボタン/ワンタッチテープ/かぶりなどでさまざまなニーズに対応。

アルトタスカルの服作りでは、コストを抑えるために制約されることもあるといいます。

「例えば、体の大きさによって服の悩みは違うので、同じ服でもサイズ別に『ファスナー』と『ボタン』の2種類の仕様を作りたい。でも、予算や生産上の都合により作れるのはどちらか片方。もう片方は諦めなければいけません。
発売するとやはり『もっとこうだったら』という声がたくさんあり、心苦しく思います」

「やりたいこと」と「できること」がせめぎ合い、働き方も商品作りも試行錯誤しながら頑張る林さん。

「アルトタスカルの認知度が上がってブランドが成長すれば、できることも増えるはず。たくさんの方に役立つ服を作りたいです」と話します。

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