当事者の声 ー重度障がいのある人の自立について考えるー
病気や障害のある子どもや家族にとって、18歳以降の居場所の問題であったり、親亡き後問題は、当事者が幼少期の頃から関心の高いトピックです。
チャーミングケアでは、この話題に関して専門家を交えてのオンライン座談会を行ったり独自取材などを続けてきました。
そんな中、2023年12月、スケッターというサービスを介して、重度障害がありながら一人暮らしをされている方のお宅を訪問し、ホームケアについてやご本人の今までの経歴などを傾聴するという「インタビュー助っ人」を体験させていただきました。
https://www.sketter.jp/reports/8608
スケッターを運営する株式会社プラスロボ様や該当訪問介護サービス(ホームケア土屋様)に許可をいただき、インタビュー内容をチャーミングケアでもレポートさせていただきます。
ホームケア土屋のヘルパーサービスを利用されている方のお宅にお伺いし、訪問介護サービスを利用しながら一人暮らしをされている60代の女性にインタビューをさせていただきました。
発話がゆっくりで聞き取りにくかったり、ご本人が難聴という困難さはありましたが、言語でのコミュニケーションが可能な利用者さんだったので、当事者からの意見を聞かせていただけたのがとても収穫でした。
事前に伺っていた情報で最も気になっていた部分、結婚歴があるという点をまず最初に質問させていただきました。
と利用者さんは少しはにかみながら答えてくださった。
支援学校を卒業してすぐに施設入所されそこで「自分でできる事はできるようになる」という訓練をした。
利用者さんはそこで知り合われた方とご結婚されたそう。
ご夫婦で生活されていた時は、できることを分担して2人で生活をしていた。その頃はできる事の範囲が現在よりも広く、ご実家の家業の手伝いなどをして収入も得ていたのだとか。
ただ、ご両親が高齢になってきたり、ご主人が亡くなった後、生活スタイルが変わってきたと利用者さん。
その一方で60代になって思うのは、人に気を遣い続けるのはちょっとしんどい。
紆余曲折があって現在は自分の気に入ったお宅で一人暮らしが可能になっているが、家族で共同生活をされていた時期もある。
家族仲はよく、みんな納得した上で共同生活をしながらヘルパー利用をしていたが、家族以外の人が家に出入りすることにも精神的なハードルがあった。
利用者からすると当たり前の感覚が、家族や同居者からすると当たり前でなかったりして、その目線合わせをするのが段々と大変になってきたのだとか。
食事の時間をずらしたりして調整できなくはない。だけど複数人で暮らしていると全員の納得を得るのって難しいんです。
当たり前な話なんですが、ヘルパーさんが調理介助するのは一食分(利用者分)だけなんですよね。
どのようなケアプランを組んでいるかを伺うと、現在は11社の事業所と契約をしていて、基本的には自分でケアプランを立てているとのこと。
とホームケア土屋の担当者さん。
とも。
そしてヘルパーの賃金が低すぎると感じます。
利用する側がこんなこと言ったらいけないけれど、ヘルパーさんの仕事のモチベーションが「人の役に立つというのが嬉しい」という心意気だけになっているように思えて、なんだか申し訳ない気持ちなりますね。
制度を変えないとなかなか賃金は上がらないと思いますが、賃金が上がらないとヘルパーの成り手が少ない→重度障害の一人暮らしの実現化が困難になると感じます。
ケアを受けている当事者でも構造の歪さに気づきながら日々生活しているという現実を知った。
最後に
自分のことはある程度自分でやれるって親に見せておくと安心します。
当事者も保護者も同じように年をとっていくんだけど、親はいつまでも子供を子供だと思っているから、ずっと心配していると感じます。
だけど、一度自分でやれるというのを早い時期に見せておけば、その心配も少し減るように思います。
とメッセージをいただいた。
今回のインタビューでは、全介助が必要な方の一人暮らしの生活やこれまで生き方を教えていただきました。
いいヘルパーさんや介助者、個人の特性など様々な要因がうまく噛み合って自立した生活を送っておられましたが、現状の日本では全介助が必要な方が一人暮らしをするということは、とてもハードルの高いことです。
しかし今回のインタビューで、「自立する」ということの複数のヒントを教えていただきました。
今後も、それぞれの自立をテーマに、様々な方のお話を伺っていきたいと感じました。
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