子どもの外見ケアを考える

まなぶ
*こちらの記事はForbes JAPAN にて連載している『チャーミングケアで広げる家族の視点』の原稿文となります。 治療だけでは不十分。小児がんサバイバーへの「外見ケア」が進まない理由
我が子が「小児がんサバイバー」になってもう少しで2年が経とうとしている。 病気が発覚した当時小学2年生だった彼も、この4月から小学6年生になる。小学6年生にもなってくると、当時の事を振り返って自分の意見を口にすることも多くなってきた。 私が、スペシャルキッズといわれる病気や障害のある子どもたちへの外見ケアやメンタルケア、家族のための総合的なケアを「チャーミングケア」と名付け発信していることも関係しているのだろう。 まだ小学生なので、まだしばらく親である私がある程度のサポートをしなければいけないと感じているが、彼の言葉は当事者ならではの言葉なのでハッとさせられることが時折ある。 彼の闘病中のエピソードに、病中の子どもの外見上の変化による問題がある。 抗がん剤治療を受けたので、髪の毛がすべて抜け落ちてしまった。 それはよく知られているがん治療の課題だと思うのだが、同時にステロイド剤を長期間使用するので顔がパンパンに浮腫み、お腹もぷっくりと膨れてくる。爪の根元の黒ずみも現れた。 そういった子どもの外見上の変化などのケアについて、運営しているチャーミングケアで過去にオンライン座談会を行ったことがある。
アピアランスケアとチャーミングケアを考える
小児がんサバイバーの子どもを持つ保護者と、看護士などがそれぞれの体験を共有しあった。 その中で、小児がんサバイバーの子供を持つ保護者からは以下のような声が上がった。 ●子どもなので外見上やメンタル面での困りごとを言葉でうまく伝えられない部分を、大人が汲んであげて少しだけサポートするのが親の役目だった ●治療上で優先しないといけないって言われてしまうと、やりたくてもやりにくかった ●薬の影響で外見上の変化が起こり、好きな子に指摘されて傷ついていた ●治療時は子どもも保護者も治療でいっぱいいっぱいで、アピアランスケアにまで気が回らない< ●病院では同じような外見の子がたくさんいるから、見た目の問題に慣れていたけれど、日常生活に戻るとそうではなかった ●声をあげても「命が助かったんだからよかったじゃないですか」と言われるとそれ以上のケアを諦めてしまってる部分がある ●アピアランス専門でやってくれる先生がいればありがたい ●アピアランスケアが必要な場合もない場合もあるが現状選択肢がない。選択肢が欲しい。 一方、看護師側からは以下のような意見が上がった。 ●看護師としては、声をかけづらいというのが現実 ●気にしてるのがわかるからこそ、本人も話したくないのではないか、そこに触れてはいけないのではないかという気がする ●小児のアピアランスケアに関して、そもそもの知識自体が不足している ●子供だからと、あまり重要視していないスタッフが多いのが現実 ●何か方法を提案しても、経済的な負担が保護者にかかってしまうので、その部分もネック 座談会での話を鑑みて、成人分野で外見上のケア「アピアランスケア」を推進している東大病院乳腺・内分泌外科の分田貴子先生に、お話をうかがった。 分田先生は、2009年にがん治療における外見ケアの重要性に気づきカバーメイクを推奨するようになり、その後も精力的に活動を行っておられる。  

―アピアランスケアが必要。気づきから実践へ―

分田先生はワクチンを用いたがん治療法の研究チームに入っていた約10年前に、その治療による外見上の変化に気がついた。治療とは別のことで患者さんが困っているのではないか?とチーム内に繰り返し声をあげたのだという。 「治療のためなんだから、患者さんは困っているはずがない」という意見が多い中、30人ほどの患者にインタビューをとった。当時のことを振り返ってこう話してくれた。 思っていたよりずっと困っていたんだなというのがわかりました。 温泉に行けないとか半袖が着られないとか、具体的な話がどんどん出てきたんですね。 そしてそのうちの一人の方からのご意見で、隠せるものなら隠したいですよという話が出て、そこでカバーメイクに出会いました。 カバーメイクを習って、それを患者さんに薦めてみたら、今度はまた別の外見上の問題を耳にするようになりました。 髪は生えてきますか?とか爪が変形してしまいましたとか。 カバーメイクだけじゃ患者さんはハッピーじゃないと感じました。それぞれの困りごとに合わせてウィッグやネイルなどを取り揃えていった結果、現在東大病院内で行っているような外見ケアの活動が、少しずつ出来上がっていきました。 そこに至るまで約10年の時間が経過している。チャーミングケアで行った座談会の内容も共有し、どのようにアピアランスケアが広がっていったのか?またなぜそれが小児分野にまで及びづらいのか?という部分をうかがった。 成人分野のアピアランスケアが広がっていった背景には、時代の流れが非常に関係していたかなと思いますね。始めた当初に「それって何になるんですか?」ってご意見をいただいた時は、あれ?わたしの話がどうやら通じてないかもしれないなと感じました。2009年ごろの話です。 インタビューをとって、実際カバーメイクを始めてしばらくしたら、他の医師から「患者さんたちが、喜んでいらっしゃるようですね」と言われ出したのが2013年。 初めて講演活動をしたのが2013年なんですが、カバーメイクの症例を挙げて研究会で発表した際に、一人の男性医師が手をあげて 「話を聞いてとても反省しました。外見上の変化について、患者さんが嫌がっていてもそれは命の勲章だと言っていました。それを反省しています」とおっしゃたんです。 5年経つとこんなに変化があるものなんだなぁと感じました。 治療のためなのだから、患者さんもなんとも思っているはずがないという感覚が雪解けになってきた理由には「サバイバーシップ」と言われる感覚が浸透してきたという部分は大きいのかなと感じます。 がん患者さんの数が増えていることや寿命が伸びていることも起因していると思います。治療法が変わってきていて、入院ではなく外来での治療に変わってきていることや、目に見えるがんが手術で取りきれた場合でも、補助化学療法という再発予防目的の抗がん剤治療をするのが一般化してきていることも挙げられると思います。 がんであっても働きながら過ごす時流も、アピアランスケアの重要性を国が認め始めてきたということも大きいと感じます。 見た目の変化にお悩みの成人患者さんは、個人でありものの中で工夫をされている状況なのですが、お子さんはそれがご自分でできないので、そこが課題かもしれないですね。 成人分野もそんなに選択肢が豊富というわけではないと思います。しかしやはり、その中で子供用を作っているところがあるかと言ったらとても少数です。 入院とか病気になることで「患者さん」になるんですよね。 チャーミングケアのお話をうかがって感じたのは、大人のほうが「患者さん」に成り切ってしまうのかもしれないですね。お子さんのほうが素直な分、そのままの自分でいるのかもしれないなと感じました。 しかし大人は、子供のほうが大人より順応できると思い込んでいるような感覚があるのかもしれないですね。 いかに自分ごとと捉えられるかがとても大切で、子どもだからといって少しみくびってしまっている部分があるので、子どもの外見ケアの考え方の進度を遅めてる気はします。 カバーメイクに関してですが、親御さんがお子さんの外見ケアの相談で来られた場合でも、相談を受けた時と後では、親御さんのご様子に明らかに安心や満足などの変化があります。 色々な病気の患者さんに沿った外見ケアがきっとあるだろうし、それが広がればと感じます。 現状、小児医療の現場で「チャーミングケア」の存在はない。そんな中で、成人分野の外見ケアについてもあらましを伺えたのは非常に貴重な機会だった。 この話題に関しては、次回より具体的に掘り下げていきたいと思う。