親の明るさは最強のチャーミングケア
私の息子は2016年5月に小児白血病と診断され、そこから足掛け1年入院生活を共にしました。
白血病と聞くと、「世界の中心で愛を叫ぶ」のように、不治の病というイメージがあるかもしれません。しかし、小児分野の白血病は型にもよりますが、85%くらいの確率で寛解し、今や治る病気となっています。
白血病も小児がんという括りに入っており、小児がんの中で最も多いとされています。小児がんの年間発症数は2000人から2500人と言われており、大人も含めたがんの総数100万人ほどから見ても非常に少ないことがわかります。
入院序盤、欲しい情報がほとんどない不安
少ないが故に困ることがあります。それは一番不安な時に、話が聞けるお手本が周りにいないのです。
がんには全国に拠点病院というものがあり、大人で400施設ほどあります。一方、子どもは15施設ほどしかなく、白血病に関しては拠点病院でなくても治療を受けることができますが、治療を受けられる病院は限られていて、そこには同じような境遇の長期入院が必要な子ども達が集まっています。
まだ入院して間もない病院内で、「あなたのお子さんは、なんの病気ですか?」と聞きまわることもできず、私が考え出したのは、同じ種類の点滴をしている子を見つけてそのお母さんに病気について色々と話を聞くことでした。
明るい要素が見当たらない
話を聞くことができた私は、少しは不安材料が少なく過ごせた方だと思います。大部屋になれば、子ども同士のコミュニケーションも増えるので、必然的に親同士も話をするようになります。
親同士の話題で共通だったのは「ネットで情報を検索しても、暗くしかならない。」というもの。
情報社会と言われ、SNSやブログが日常化されている分、きっと数年前に比べればたくさんの情報はあるんだと思います。けれど、そのどこにも明るい要素は見当たらないのです。
それもそのはずです。小児がんは子どもの死亡率NO1で、自分の子どもが生きるか死ぬかという最中に、明るいブログなんて書いている人がいるわけがないのです。
しかしそんな中で、たった一人だけ子どもが小児がんになっても笑顔でのりきっている先人を見つけたのです。それが、現在マミーズアワーズショップで「開運ダルマ」というお守りを制作販売してくれているペコちゃんこと加藤可奈さんです。
加藤さんのブログはこちら
「笑顔のちから」のジャンルって?
加藤さんは、希少な膵芽腫を患った娘さんとの小児がん闘病記「笑顔のちから」を出版されています。私も読ませていただきましたが、大変な状況は想像できるのですが、とにかくそこには悲壮感がないーーこれだ!!と私は思いました。ですが、その「これだ!」という感情には名前がありませんでした。
成人分野では、治療以外の外見ケアやメンタルケアのことを「アピアランスケア」と総称します。
ですが、小児の分野にはそもそもアピアランスケアの概念も浸透していないし、子どもにとっては、外見的なケアももちろんですが、それよりも先に子どものモチベーション維持のためにも、メンタルケアが重要なところがあります。
そのメンタルケアをしていくのは、一番そばにいる親なのです。
加藤さんに少しお話を伺いました。
闘病中、子どものメンタルケアなどのことで、何か気をつけていたことなどはありますか?
*加藤さんも参加していただいたチャーミングケア座談会の内容を踏まえてのインタビューです
加藤さん
特別何かを意識をしていたことは全然ないですね。
ただ、毎日をバカみたいに明るくアホなことをしまくって過ごしていたっていう感じで。
それがうちには自然だったし、それがあったから、ある意味乗り越えられたのかなとも思いますね。
石嶋
そうだね。うちも、そういうところあると思います。うちは決して闘病中の家族として優等生じゃなかった。(笑)
だけど、よく笑って過ごしてた気はする。あの特殊な空間で自宅と全く同じってわけにはいかないけれど、私たちスタイルっていうのはあったと思うなぁ。
加藤さん
これが正しいっていうのはないんですけどね。でも、子ども相手に落ち込んでても仕方ないしねぇ。うちは闘病してた頃は3歳だったし。でも病気のことはばっちりわかってましたけどね。
石嶋
うちは小学2年の時だったけど、タイミングをみて話をしたなぁ。子どもだからって侮っちゃいかんと思うなぁ。きちんと受け止めてたよ。
加藤杏菜ちゃん
そうだよ。子どもだってわかるよ。わからないっていう方がわからない。
加藤さん 石嶋
ほーーーーー
*杏菜ちゃんは、現在小学6年生になっています。
明るさは最強の愛
自分の子どもが病気になっているのだから、親が看護するのは当たり前なのかもしれない。ですが、親だって人間です。自分の子どもが死ぬかもしれないような病気にかかったと知っただけで、この世の終わりのような感覚になります。
私も加藤さんも、その「この世の終わり感」は味わっています。だけど、暗くなろうと思えばいくらでも暗くなれる中、親が明るく過ごすこと、病気なんて笑いで吹き飛ばしちまえ!というその活力は、振り返ってみれば子どもにとっての最強のメンタルケアになったんじゃないかなと思います。
もちろん個人差はあると思います。
ですが、それこそが「チャーミングケア」の一つの形なんじゃないかなと私は改めて感じました。
*チャーミングケアとは、子どもが子どもらしくいるための外見ケアやメンタルケア、それを支える保護者のメンタルケアなど、病児や障害児・医療的ケア児の治療以外のトータルケアの総称として、チャーミングケアラボが推奨している考え方です。
加藤さんの娘さん杏菜ちゃんは、私が取材に訪れた時にこう言いました。
「ねぇねぇ、うちのお母さんさー。みんなに面白いねって言われるんだよ。可愛いねとか、綺麗だねじゃなくて、面白いねだよ。どうよそれ?」と
私はこう答えました。
「面白いは愛なんだよ。可愛いや綺麗より強いねん。明るくしてるのも大変なんやで。明るさは最強の愛なんだよ。」
と。
今回は、親だけの意見ではなく子どもの側からの意見も聞くことができて、とても有意義な時間でした。
そんな加藤可奈さんも参加してくれているチャーミングケアラボの座談会はこちら
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