ENGLISH TITLE & SUMMARY Q Care Journal – Hospital: Reading about family life during a child’s hospital stay Open to read a brief English summary.
This is an English summary of the Japanese article below.
Charming Care founder Mizuho Ishijima discusses how her experience of staying in hospital with her child inspired Q Care Journal’s planned hospital edition. The interview explores the kind of reading she wanted during that time: stories about family life, learning, appearance and life after discharge, alongside opportunities to connect with mentoring and other support.
暮しの手帖から始まった情報誌の構想
病院での付き添い生活には、長い「待つ時間」があります。けれど、その時間は自由に使える余暇とは少し違います。子どものそばを離れられず、先の見えない状況に気持ちを置いたまま、一日を病院の中で過ごす。何か読みたいと思っても、一般的な雑誌はすぐに読み終わってしまい、ファッション誌で紹介される服や場所は、病院での暮らしから遠く感じられることもあります。
チャーミングケア代表の石嶋瑞穂は、子どもの入院に付き添っていた2016年当時、病院の売店で『暮しの手帖』を購入し、定期的に読んでいました。
その経験から生まれたのが、「病院の中に暮らしを届ける情報誌」という構想です。
今回は、チャーミングケアがなぜ情報誌をつくろうとしているのか、その原点について聞きました。※本記事は、石嶋本人の経験と記憶をもとに構成しています。
付き添い入院の非日常で、暮らしを感じられる読みものがなかった
聞き手
病院向け情報誌をつくりたいと思った原点は、付き添い入院中の経験なんですか?
石嶋
そうですね。2016年に長男が小児白血病に罹患して、そこから約1年の付き添い入院の経験が原体験になっています。子どもの入院付き添いって、気苦労は多いんですけど、基本的にはめちゃくちゃ暇なんですよ。
聞き手
! 暇、なんですか。
石嶋
もちろん子どもの病状にもよると思いますが、私の場合は子どもが急性リンパ性小児白血病だったので、治療プロトコルがある程度決まっていて。治療期間は長いんですが、ある程度見通しが立てられたというところが大きかったのかもしれないです。
とはいえ、暇なんだけど、自由時間ではないんです。子どものそばにいないといけないし、いつ何があるか分からない。時間はすごく長いのに、自分の好きなことを自由にできるわけではない。
インプットにもアウトプットにもなんか向いてないっていうか。今ほどSNSで個人が発信することが当たり前でもなかったし、そもそも私自身、そういう発信に興味もなかったというか。
何か気を紛らせるために本を読もうと思うんですけど、一般的な雑誌ってすぐに読み終わるんですよね。ファッション誌なんか特に、院内でどう活用するのっていう(笑)。掲載されている服を着てどこかへ出かけるわけでもないし、買い物に行けるわけでもない。かといって、週刊誌を読みたいかというと、自分の家庭がなかなかハードモードの時に他人のゴシップとかどうでもいいっていう(笑)
聞き手
本や小説はどうでしたか?
石嶋
もちろん読むことはできます。でも、当たり前なんですが、本の中には「病院で暮らす」という概念がないんですよね。
病院の外で普通に生活している人たちの世界を読んでいるようで、なんとなく「よその世界のもの」に感じることがあったんです。
病院の売店で買った、「暮しの手帖」
聞き手
その中で読んでいたのが『暮しの手帖』だった。
石嶋
そう。病院の売店で調達して、割と定期購読していました。
食べることや季節のこと、人との関係、仕事や人生のことが、情報として載っているだけじゃなくて、ちゃんと読み物になっている。病院にいても、暮らしを感じられたんだと思います。
当時の私は、病院から離れたいというより、病院の中で暮らしを感じたかったのかもしれません。
聞き手
それで暮しの手帖が出るのを楽しみにしていた。
石嶋
そうなんです。ただ、病院の売店で買う時ちょっと微妙な気持ちになった記憶があります。渋いチョイスだなと思われてるだろうなと。
暮しの手帖って、たぶん本来のターゲットは私よりもう少し上の世代なんですよね。家庭を長く回してこられた方たちのための読み物、という感じがあって。私は当時30代後半で、内容そのものはすごく沁みたんですけど、「これは私たちの世代のための読み物ではないな」という距離感は、正直ずっとありました。
でも、他にないんですよ。私たちの世代の、しかも病院の中で暮らしている人のための読み物って。もう少し自分向けになっていたらいいのにと思いながらというのが、本当のところかもしれません。
聞き手
医療情報がほしかったわけではないんですか?
石嶋
医療情報も必要です。でも、それだけで一日を過ごせるわけではないですよね。あとは当時はそこまで情報が溢れてなかったので、調べれば調べるほどに自分や子供にとってマイナスな情報に行き着いてしまってしんどくなりました。
患者や付き添い家族である前に、普通に暮らしているので。病院にいるからといって、読むものまですべて病気の説明や制度案内である必要はないと思うんです。
自分の文章が載るならどこだろう
聞き手
そこから、いつか自分も『暮しの手帖』で書きたいと思うようになったんですか?
石嶋
チャーミングケアの前身となる活動を始めたのが、2017年ごろです。
一人で活動を始めだした頃から、「もし自分が書いた文章が紙面に載るとしたら、どの雑誌なんだろう」と考えるようになって、大きめの本屋さんへ行って雑誌をめちゃくちゃ観察しました。
いろいろ見たんですけど、やっぱり『暮しの手帖』しかないじゃないかと思ったんですよね(笑)。
聞き手
どんなところに惹かれたのでしょう。
石嶋
細谷亮太先生の「いつもいいことさがし」という連載があったんです。
細谷先生は小児科医で、小児がんの専門医でもある。でも、文章が医療者としての視点だけで書かれているわけではなかった。
子どもたちとのことや命のことを扱いながら、本や映画、俳句、思い出、自分自身の暮らしについても書かれている。その感じがすごくよかったんです。
医療者だけれど、それだけの視点ではない。私は医療者ではないけれど、生活者としての視点なら書けるかもしれない。いつか、こういうふうに文章を書きたいと思っていました。
細谷先生の連載は23年間続き、後に『いつもいいことさがし』として書籍にもまとめられています。
参考:暮しの手帖社による書籍紹介
作れないなら寄稿者になろうと手紙を送った
聞き手
その時点で、すでに「病院版の暮しの手帖」のようなものを考えていたんですか?
石嶋
「暮しの手帖の病院版があったらいいのに」とは思っていました。
でも、当時の私にそんなものを作れるはずもなく(笑)。今のようなメディアでの執筆歴もなかったし、どこかのメディアに所属していたわけでもありません。
だったら、寄稿者として書かせてもらうことはできないかなと思ったんです。
聞き手
それで実際に手紙を送った。
石嶋
送りました(笑)。いま考えると、それもすごい話ですけど。
もちろん実現はしませんでした。でも、自分がどこで、何を書きたいのかは、そのころから変わっていないんだと思います。
寄稿先を探すところから自分で媒体をつくるところへ
聞き手
その後、2018年からハフポストでの連載が始まったんですよね?
石嶋
そうですね。そこから少しずつ他の媒体さんでも記事を書く経験が増えて、今ではメディアに所属するようにもなりました。
でも、やっぱり根本にあるのは、付き添い入院中に感じていたことです。
病気の説明だけではなく、そこにもちゃんと暮らしがあって、その後にも暮らしが続いていくことを感じられる読み物がほしい。
『暮しの手帖』への寄稿が実現しないなら、自分でつくろうと思うようになりました。
病院向けではなく、病院にいる生活者のために
聞き手
チャーミングケアが考えているのは、一般的な患者向け広報誌とは違うものなんですね。
石嶋
活動報告とか報道文章みたいなものを病院へ届けたいわけではないんです。
制度やサービスを分かりやすく紹介することも必要です。でも、情報を並べただけでは、付き添い中の長い時間に読むものにはならない。
すべての記事に、書いた人の視点や経験があって、ちゃんと物語がある読み物にしたいと思っています。
病院にいる人は、病気である部分だけで生きているわけではありません。そこで食事をして、眠って、考えて、子どもと話して、ときには仕事をしている。病院の中でも、生活は続いています。
だから「病院向けの情報誌」というより、「病院の中にいる生活者のための情報誌」なんだと思います。
読んだあとの暮らしまで支えたい
聞き手
情報誌の先に、メンタリングサービスも立ち上げようとしてるんですよね。
石嶋
病院から出たあとには、ちょっとハードモードな暮らしが続くことがあります。
子どもが学校へ戻ること、保護者の仕事との両立、家族やきょうだいのこと、外見の変化、周囲とのコミュニケーション。病院の中では見えにくかった困りごとが、日常生活へ戻ってから出てくることもある。
情報誌を読んでもらって終わりではなくて、その先で困ったときに「サポートしますよ」と言えるところまでやりたいんです。
読み物を届けることと、メンタリングで伴走することは、私の中では別々の取組ではありません。どちらも、病院の中と、その後に続く暮らしを支えるためのものです。
聞き手
それが、チャーミングケアから発信する記事すべてのコンセプトでもある。
石嶋
そうだと思います。
病気や障害の周辺情報はもちろん必要です。でも、そこから書き手の視点や温度を取り除いたら、読み物として成立しない。
人の暮らしには、一つずつ物語があります。だから、チャーミングケアの記事も、すべてに物語があるものにしたいと思っています。
おわりに
子どもの入院付き添い中に病院の売店で手に取った一冊の『暮しの手帖』。
そこから、「病院の中にも暮らしを感じられる読み物がほしい」という思いが生まれました。寄稿者になれないかと送った一通の手紙は、当時は実を結びませんでした。
それから約10年。石嶋がつくろうとしているのは、医療情報だけを届ける冊子ではありません。
病院で過ごす時間と、その後に続く少しハードモードな暮らしに、物語のある読み物と、必要なときに頼れるサポートを届けること。
かつて「こんな情報誌があったらいいのに」と思った本人が、いま、その媒体を自分でつくろうとしています。
