退院後の悩みをケアする制度作りを【鮫島 舞 先生インタビュー】

退院後の悩みをケアする制度作りを【鮫島 舞 先生インタビュー】

昭和大学病院での経験を通して、子どもたちの成長を見守る制度作りの重要性を感じた鮫島舞先生。現場で感じた課題を解決するために、ハワイの大学院で医療政策を学んでいます。今回は鮫島先生に、子どもたちに病気のことをどう説明しているのか、関わり方についてお話を伺いました。

保護者だけではなく子どもにも説明することが大切

鮫島先生は、子どもたちの入院が決まったときは、説明は親子一緒に聞いてもらい、保護者の方だけを呼び出すということはあまりしないといいます。
入院中も、学童期以降の子には、保護者と同様に診断名や治療方針をしっかり説明するそうです。
「特に、点滴など体に針を刺すような処置には、本人に理解・協力してもらうために説明が欠かせません。
今こういう可能性を考えてて、そのためにこの検査が必要だから頑張ってほしい。この検査ではこういう処置をします。痛みに対してはこういう薬を使うけど、痛みはあるから、心を決めておいてほしいと具体的に伝えます。
一方で、医療現場では、いつ誰にどう説明するかという方法は、実はほとんど決まっていません。
ケースによって事情は異なるので難しいテーマですが、子どもにどう話すか悩んだ時に参考にできる資料があるといいですね」

退院後も続く、学校生活・外見の変化・精神的な悩み

退院前にしっかりICを取ることが多く、話の内容を簡潔に、なるべく専門用語を使わずにまとめた紙を作って、保護者と本人に差し上げるようにしていると鮫島先生。
学童期以降の子の場合は保護者と本人、糖尿病など学校生活での注意点が多い病気の場合は、学校関係者も呼んで、退院後の生活について説明するそうです。

ただ、薬の副作用による外見の変化(例えばステロイドならムーンフェイスなど)は、言葉だけでは想像が難しいもの。
退院後の外来で副作用の症状を聞きながら、今後の見通しを説明することも多いと話します。

「不登校や人間関係などの悩みも大切ですが、精神的な問題を相談されたことは、実は今までありません。
お子さん本人や保護者は、大学病院の先生に『病気に関して話す先生』という印象をお持ちで、打ち明けにくいのかもしれないなと精神的な悩みへの介入に課題を感じています。」

注目される「ソーシャルプリスクライビング」

医療や教育ではない、健康保持・増進のための社会の仕組みは「ソーシャルプリスクライビング(社会的処方)」と呼ばれ、近年注目されています。

鮫島先生
「小児専門の心理的なケアにも対応できるケアマネージャーがいて、子どもが病院では話せない悩みを聞き、必要に応じて医療に繋ぐ制度があればと考えています。
日本でも、各地域でソーシャルプリスクライビングの自発的な取り組みがあるので、それぞれが繋がっていくといいと思います」

子どもが自由にのびのびと成長できる世の中に

鮫島先生の目標は、子どもが自由にのびのびと成長できる世の中を作ること。
そのためには、子どもたちが自由に自分らしく過ごせる場所作りが重要です。
子どもたちと制度との架け橋になるため、医療の現場から医療政策の道に進んで、実現を目指しています。

インタビュイー プロフィール
鮫島 舞(さめじま まい)先生
群馬大学卒業、昭和大学病院で小児科専門研修修了後、東京都立荏原病院で勤務。
コロナ禍を経て、子どもたちおよび保護者への関わり方やヘルスリテラシーに興味を持ち、ハワイ大学公衆衛生大学院に進学。
現在の専門は健康格差是正のための地域や国レベルでの仕組みづくり。
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