「噛む機能をどう整えるか」──病気や障がいのある子どもの歯と口腔機能に向き合う

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「歯があれば噛める、というわけではないんですね」──。

日本小児矯正研究会 統括指導医・花田真也先生に伺ったお話の中で、もっとも心に残った言葉です。

現代は虫歯の子どもが減っている一方で、「うまく食べられない」「歯並びが悪い」と悩む子どもが増えているといいます。その背景にあるのは、母乳や離乳食の段階からはじまる「口腔機能」の発達。さらに、障害のある子への口腔ケアがもたらす驚きの変化や、病気の治療と並行して早期に歯科へ相談することの大切さなど、「保護者に気づいてほしい」大切な視点が詰まっています。

「歯と口の健康週間」(6月4日〜10日)にあわせて、花田先生にお話を伺いました。

Q1|「歯並び」より手前にある問題について

虫歯のある子どもは減っているのに、「うまく食べられない」「歯並びが悪い」子どもが増えているという話を伺いました。何が起きているのでしょうか?

最近は虫歯のある子どもが以前より減ってきているのに、ちゃんと食べられない子、歯並びが悪い子は逆に増えている、という状況があります。

背景にあるのは「口腔機能」の問題です。歯があれば噛める、というわけではないんですね。「口腔機能発達不全症」という言葉をご存知でしょうか。うまく噛めない、飲み込めない、口呼吸になってしまう——そういった機能的な問題が、歯並びや発育に大きく影響しています。国も今、口腔機能を診るよう推奨しているくらいです。

母乳を飲む段階、離乳食の段階でうまく機能が育っていなかった、という子もいます。「歯」という道具を整えることより先に、「噛む・食べる」という機能そのものへのアプローチが必要な時代になっています。唾液の分泌も口腔機能の一部です。

保護者の方にできることとしては、「噛むことを楽しむ感覚」を教えてあげることが一つの入り口になると思います。食べ方を一緒にサポートする、それだけで変わってくることがあります。

Q2|知的障害・重症心身障害のある子どもの歯へのアプローチ

障害のある子どもの口腔ケアには、特別なアプローチが必要だと思います。感覚の問題や経管栄養など、特別なニーズのある子どもへはどのように関わるのでしょうか?

実は、摂食・嚥下のケアという学問は、障害のある子どもへの関わりから発展してきた分野なんです。高齢者への口腔ケアが注目されることが多いのは、単純に母数が多いからですが、学問的なベースはむしろ障害児への関わりから積み上げられています。

障害のある子どもの中には、感覚が鈍いお子さんもいます。そういった場合でも、口の周りを触るだけのケアや、口の動きが良くなるようなマッサージが有効で、それによって体重が増え始めたり、唾液の分泌が改善したりすることがあります。触るという刺激だけで、十分なアプローチになるんです。

口から食べられない状態のお子さんでも、口腔機能にアプローチすることで改善傾向が出てくるケースがあります。諦めないでほしいと思います。

相談先としては、大学病院附属のスペシャルニーズ歯科が一つの選択肢です。また、障害のある子どもへ対応できる訪問歯科も少しずつ増えてきています。一般の開業医でも対応できるところが増えてきた印象がありますので、まずはかかりつけ医に相談してみてください。

Q3|病気の治療が歯の発育に影響した子どもへのアプローチ

病気の治療によって歯の発育に影響が出るケースがあると聞きます。欠損や発育不全がある子どもへは、どんな対応が可能ですか?また、保護者はいつ・どこに相談すればよいのでしょうか?

歯の欠損症は、全体の約10%のお子さんにみられます。病気の治療の影響で起こることもありますし、先天的なものもあります。ただ、私はこれを「その子の個性」として受け止めることも大切だと考えています。欠損があること自体が問題なのではなく、「噛む機能をどう整えるか」という視点で関わることが重要です。

制度的な話をすると、3本以上の欠損があると保険適用になる場合があります。ただしこれは専門の資格を持つ歯科医師でないと対応できないため、まずは一般の歯科医師に相談のうえ、専門医への紹介を検討してください。

また、医療連携は以前よりずいぶん進んできています。「病気のことを歯科が知らなくていい」という時代は終わっています。主治医と歯科医師が情報を共有しながら関わるケースが増えてきているので、「矯正の話は治療が終わってから」ではなく、治療と並行して早めに歯科に相談することを勧めたいです。

Q4|多職種連携と、歯科から社会への発信

栄養士、保健師、医師、歯科医師——それぞれが子どもの「食べる」に関わっているはずですが、連携できていない場面も多いと聞きます。現場の歯科医師として、理想の連携のあり方と、チャーミングケアのような団体との協働の可能性についてお聞かせください。

今、「どんな栄養を摂るか」については栄養士さんが指導してくれる環境が整ってきています。でも「どうやって食べさせるか」——食べ方そのものを指導できる専門家が、現場にはまだ足りていません。栄養の知識はあっても、食べさせ方を教えるところまでカバーできていないケースが多いのが実情です。

食べ方指導において、白羽の矢が立っているのが歯科医師なんですが、実際にそこまで対応してくれる歯科医院はまだ少ない。保健師さんがボランティアで関わっているケースもありますが、継続的な仕組みにはなっていません。

私自身は保育園を経営しており、食育から取り組んでいますが、1軒だけでは絶対に足りない、という感覚があります。だからこそ研究会を続けていますし、他の幼稚園や小学校でも講演をしていきたいと考えています。

自治体の教育現場でも、こうした食べ方指導の仕組みがまだ十分に整っていないところが多い。結果として、保護者が自力で情報を集めなければならない状況になっています。

「声なき声を形にしていく」——これが今私たちがやるべき仕事だと思っています。チャーミングケアのような団体が、その情報の橋渡し役になってくれることで、まだ問題に気づいていない保護者の方々にもこうした情報が届くようになる。そこに大きな可能性を感じています。多職種が歯科をベースに連携する仕組みを、一緒に広げていきたいと考えています。

「噛む・食べる」という当たり前のように思える機能の背景には、たくさんの気づきや、周囲のサポートの大切さが隠されていることを改めて実感させられるインタビューでした。子どもの「食べる」を社会全体で支えていくために、私たちができる一歩を考えていきたいですね。

花田 真也 先生

日本小児矯正研究会 統括指導医
医療法人はなだ歯科クリニック理事長


はなだ歯科クリニックではルタンデ保育園を歯科医院に併設されています。
住所
福岡県大野城市白木原1丁目17-4サンリヤン 大野城 駅前 Ⅳ番館 1F

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