病気や障害のある子どもの相談先は、なぜ分かりにくいのか

Qケア

病気や障害のある子どもと家族の困りごとは、医療の中だけで完結しません。学校生活、復学、学習の遅れ、進路、福祉の制度、家族の関係、きょうだいのこと、外見の変化。暮らしのいろいろな場面にまたがって出てきます。

そして多くの場合、困りごとは「相談できる状態」になってから現れるわけではありません。何かが気になっている。でも、それが何の問題で、誰に聞けばいいのかが分からない。そのまま時間が過ぎていく。

「困ったら相談してくださいね」と言われても、すぐには動けないことがあります。支援の仕組みは医療・福祉・教育と制度ごとに分かれていて、入口もそれぞれ違うため、相談先を決めるには、自分の困りごとがどの領域のものかを先に見当づける必要があるからです。

支援の入口は、制度ごとに分かれている

日本の支援の仕組みは、医療、福祉、教育と、制度ごとに分かれて作られています。それぞれに窓口があり、それぞれに対象の条件があります。

そのため、相談する側は「自分の困りごとは何の領域なのか」「どの制度の対象なのか」を、ある程度分かっていることが前提になります。制度の名前を知らないと検索すらできない、ということも起こります。

けれど、子どもと家族の毎日は、制度の区分に沿って進むわけではありません。学校のことと体調のことと家計のことが、同じ日に同時に起きます。だから「どこに相談すればいいか」が決まらないという現象が生まれます。

同じ病気でも、支援のかたちは子どもごとに違う

分かりにくさには、もう一つ理由があります。同じ「病気のある子ども」でも、受けられる支援のかたちが同じとは限らないことです。

また、ここで紹介する制度や相談先は、互いに排他的なものではありません。一人の子どもが、複数の制度や相談先につながることもあります。

実際には、まず病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談し、その担当者が院内の小児がん相談支援を担っていたり、地域の基幹相談支援センターや障害児相談支援事業所などにつないだりする場合があります。制度上は別の相談先でも、実務上は同じ窓口や担当者を経由することがあるのです。

そのため、最初に相談した場所が完全に間違いということは、あまりありません。ただし、その窓口がどの制度や支援機関につながっているかによって、必要な支援にたどり着くまでの道筋は変わることがあります。

障害福祉の相談支援につながる場合

児童発達支援や放課後等デイサービスといった障害児通所支援を使うときは、市町村に申請し、通所給付決定を受けます。このとき、その子に必要なサービスの組み合わせを考える「障害児支援利用計画」をつくる仕組みがあります。

厚生労働省は、この計画づくりや、利用が始まったあとの見直しを専門の担当者が担う仕組みを「障害児相談支援」として位置づけています。相談支援専門員が関わる場合は、「どんな支援が必要か」「どのサービスを使うか」「使い始めてから状況は変わっていないか」を、家庭だけで抱え込まずに整理していけます。

自分で計画をつくる「セルフプラン」になる場合

利用計画は、必ずしも相談支援事業所がつくるとは限りません。本人や保護者が自分でつくって提出する「セルフプラン」という方法もあります。

自分たちでサービスを選び、自分たちのやり方で暮らしを組み立てたい。そう考える家庭にとっては、この選択肢があること自体に意味があります。

ただ、近くに相談支援事業所がない、新しく受け付けてもらえない、相談支援について十分に説明されない。その結果として保護者が自分で計画をつくることになったケースも、制度の上では同じ「セルフプラン」として数えられます。

国もこの問題を課題としており、2026年3月に告示された基本指針では、自治体が相談支援の体制を十分に整えないまま家庭をセルフプランへ向かわせることを「厳に慎むべき」とし、「のぞまないセルフプラン」の解消を求めています。

障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針

小児慢性特定疾病の「自立支援事業」として相談する場合

もう一つ、障害福祉とは別の系統に、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業があります。

医療費助成の手続きと同じ窓口で案内されることが多いため、助成制度の一部だと受け取られがちですが、こちらは医療費ではなく、暮らしの側を支えるための事業です。自立支援員による相談支援を柱に、療養生活の支援、相互交流の支援、就職の支援、介護者の支援などが置かれています。

同じ「相談」という言葉でも、障害福祉の相談支援とは別の制度です。障害福祉のサービスを使っていなくても利用できる場合がありますし、逆に、障害福祉につながっているからといって、この事業の相談に自動的につながるわけでもありません。

そして、ここにはもう一つの壁があります。相談支援は必須事業ですが、療養生活支援、相互交流支援、就職支援、介護者支援などは、地域の実情に応じて実施される努力義務事業です。そのため、利用できる支援の内容には地域差があります。

国が事業のメニューを示していても、住所地を管轄する実施主体がその支援を行っていなければ、利用することはできません。隣の自治体にはある支援が、自分の住む地域にはない。そういうことが起こります。

制度の名前を調べて「使えそうだ」と思っても、自分の地域で実施されているかどうかは、結局、都道府県、指定都市、中核市などの窓口に確認しないと分かりません。

教育の側の支援につながる場合

長い入院や大きな治療を経験しても、障害児通所支援などを利用しない子どももいます。

病気療養が必要な子どもについては、教育の側にも支援の仕組みがあります。文部科学省は、入院中の子どもに向けて、特別支援学校や病弱・身体虚弱特別支援学級への転学・転級、もとの学校に在籍したままICTを使って学ぶ方法など、いくつもの学び方を示しています。自宅での療養が必要なときも、訪問教育や遠隔での指導ができるとされています。

ただし、これは主に「学びをどう保障するか」という仕組みです。学校生活、家での過ごし方、体調の管理、友だちとの関係、進学、将来の就労まで、暮らし全体を一緒に考え続けてくれる役割が、すべての病気のある子どもに自動的につくわけではありません。

文部科学省の令和4年度調査では、病気療養児が在籍する学校に対して取組や支援を実施した教育委員会のうち、「学校と病院の連携に必要なコーディネーター等の配置」を行っている割合は、全体の13%でした。

文部科学省「令和4年度 病気療養児に関する実態調査結果」

困りごとは、時期ごとに形を変える

支援のかたちが分かれているうえに、困りごと自体も、時期によって変わっていきます。

治療をしている時期に気になることと、学校に戻る時期に気になることは違います。小学生のうちは放課後の過ごし方や学校とのやりとりが中心でも、中学、高校と進めば、どの学校を選ぶのか、どんな配慮が必要なのか、就職をどう考えるのかという課題が出てきます。

そのときどきで、相談したい相手も変わります。ずっと同じ人が隣で伴走してくれるとは限りません。

だから「一度相談先を決めれば終わり」にはならないし、「まだ相談するほどではない」と感じる時期が繰り返し訪れます。

相談の前に、整理できる場所をつくりました

チャーミングケアでは、相談を受ける場所を増やすより先に、相談する前に自分の状況を整理できる場所が必要だと考え、2つのものを公開しました。

事前相談ナビ

5つの質問に答えると、今の状況に合いそうな相談先と、使えるかもしれない制度や用品の候補が表示されます。所要時間は約3分です。

どこかの窓口へ自動的に振り分けることはしません。候補は一つに絞らず、複数並べて表示します。手帳や受給者証を持っているかどうかだけで、相談先が決まることもありません。氏名、メールアドレス、電話番号、詳しい住所は入力せずに使えます。

結果を見て「だいたい分かった」と思えたら、どこにも相談せず、そのまま終わってもらってかまいません。診断や判定をするものではなく、頭の中を一度並べてみるためのアプリです。

全国の相談先・支援を探せる検索

地域の相談窓口や支援を探せるページも新設しました。掲載範囲は全国で、都道府県・市区町村から絞り込めます。制度名ではなく、相談したいことから入口を選べる設計です。

入口は3つあります。

  • 暮らし・福祉の相談先
    基幹相談支援センター、指定特定相談支援事業所、障害児相談支援事業所など
  • 小児がんの相談先
    小児がん相談窓口、がん相談支援センター、小児がんに関する専門相談員・専門職がいる窓口など
  • 小児慢性特定疾病の地域支援
    自治体の自立支援事業の内容と、相談窓口・利用条件

小児がんについては、診療する病院や相談窓口だけでなく、小児がんに関する専門相談員・専門職がいる窓口からも探せます。

掲載しているのは公開情報を整理したもので、利用できることを保証するものではありません。対象条件が公表されていないものは「要確認」と表示しています。最終的な利用条件は、各窓口にご確認ください。

使い方

事前相談ナビは、匿名のまま何度でも利用できます。治療中、復学の前後、進路を考える時期と、状況が変わるたびに使い直してください。

地域の相談先検索は、お住まいの都道府県・市区町村から絞り込めます。気になる窓口が見つかったら、対象条件や利用方法を各窓口に直接ご確認ください。