軽視していませんか? 子どもへの外見ケア【分田 貴子先生インタビュー】
東京大学医学部附属病院で、がん相談支援センターの医師として勤務する分田貴子先生。がん治療に伴う外見の変化に悩む患者さんたちへのケアにも取り組んでいます。
外見ケアが広まらないのは
「子どもだから」という思い込みがあるから
「小児がんの子どもたちに対する外見ケアが進まないのは、周囲の大人が子どもへの外見ケアの必要性を軽くみているからではないでしょうか」と話す分田先生。
チャーミングケアが行ったオンライン座談会でも、小児がんサバイバーの子どもをもつ保護者から「治療優先だと言われて外見ケアができなかった」「命は助かったのだからと言われてそれ以上のケアを求められなかった」という声があり、がん治療を受ける子どもへの外見ケアは優先度が低いと捉えられていることが伺えます。
サバイバーシップの浸透が外見ケアを進める後押しに
分田先生が外見ケアに取り組み始めた当時は、医療従事者の中で「外見の変化は治療によるものだから患者さんは困っているはずがない」という意見が多かったといいます。
しかし、患者さんに話を聞いてみると、「手術跡が気になって半袖が着られないし温泉にも行けない」「抗がん剤で爪が変形してしまって悩んでいる」といった困りごとを抱えていることがわかりました。分田先生は手術跡を隠すためのカバーメイクを自ら習得し、ウィッグやネイルなどのケアグッズを取り入れながら、がん患者さんの外見ケアに精力的に取り組んできました。がん患者さんの増加とともに「サバイバーシップ」の概念が広がり、近年では外見ケアの重要性を国も認めるようになりました。しかし、小児がんの子どもに対する外見ケアはほとんど進んでいないのが現状であり、病気による外見の変化に悩む子どもやその保護者へのサポートは不十分な状況です。
外見ケアは小児がんと闘う患児と家族の安心につながる
カバーメイクを得意とする分田先生のところには、病気を抱える子どもの外見ケアのために、保護者が相談にくることもあるそうです。「外見ケアに関する相談を受けたあとは、親御さんの安心感や満足度が明らかに高まっています」と分田先生は話します。
治療による外見上の変化を引き起こすのは、がんだけに限ったことではありません。分田先生は「いろいろな病気の患者さんに沿った外見ケアがあり、その必要性やケアの方法がもっと広まって欲しい」という思いで、日々の診療にあたっています。
分田 貴子(わけだ たかこ)先生
東京大学医学部附属病院 がん支援相談センター 医師2009年にがん治療における外見上のケアの重要性に気付き、カバーメイクを推奨。精力的に活動を行っている。
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