アピアランスケア助成事業の広がりと、チャーミングケアの活動軌跡(2026年最新情報更新)

こどものアピアランスケア

5年間の全国調査でわかったこと

一般社団法人チャーミングケアは、2022年7月から現在まで、全国1,741の市区町村を対象としたアピアランスケア助成事業の独自調査を毎年継続してきました。5年連続の定点観測データが蓄積されたこのタイミングで、数字の推移と、その過程で行ってきた活動を一つの記録として整理しておきたいと思います。

5年間の数字の推移

助成事業を実施している市区町村の数

調査時点助成実施未実施・不明実施率
2022年7月669市区町村1,07238%
2023年7月904市区町村83752%
2024年7月1,114市区町村62764%
2025年7月1,315市区町村42676%
2026年7月1,394市区町村34780%

5年間で、助成を実施している市区町村は669から1,394へと725自治体増加しました。実施率は38%から80%へと42ポイント上昇しています。

ウィッグ助成・乳房補整具助成・合算助成の推移

調査時点ウィッグ助成乳房補整具助成合算助成
2022年7月607自治体511自治体69自治体
2023年7月834自治体715自治体75自治体
2024年7月983自治体884自治体135自治体
2025年7月1,208自治体1,156自治体102自治体
2026年7月1,239自治体1,185自治体161自治体

ウィッグ助成は5年で632自治体増、乳房補整具助成は674自治体増となりました。都道府県と市区町村の両方の助成を併用できる「合算助成」の自治体は、69から161へと約2.3倍に増えています。

助成金額の分布傾向

ウィッグ助成の上限額を見ると、2022年時点で最も多かったのは2万円帯(365自治体)でした。2026年時点で最も多いのは1.5〜2万円帯(561自治体)で、標準ラインとしての位置は変わっていません。一方、5〜9万円帯は2022年の59自治体から2026年の141自治体に増え、10万円以上を助成する自治体も2022年の1自治体から2026年の78自治体まで増加しています。

乳房補整具助成では、2022年時点で1万円帯が200自治体と最多でしたが、2026年時点では1.5〜2万円帯が695自治体と圧倒的に多くなっています。5〜9万円帯も116自治体から126自治体へ推移しており、上位帯の厚みが増しています。

数字から見える傾向についての考察

以下は数字の推移から読み取れる傾向についての、現時点での見解です。

まず、実施率が38%から80%へと5年間で倍増したことは、アピアランスケア助成という制度そのものが「例外的な自治体の取り組み」から「多くの自治体で標準化されつつある制度」へと段階を進めたことを示しています。ただし、依然として347自治体(20%)が未実施であり、残された自治体の多くは人口規模の小さい町村部です。今後の拡大には、これまでとは異なる働きかけが必要になる可能性があります。

助成金額の分布については、標準ラインの2万円帯が動かない一方で、5〜9万円帯や10万円以上の上位帯が厚みを増している点が特徴的です。単純に「実施率が広がった」だけでなく、既存自治体で制度の拡充が進んでいることを示唆します。

合算助成の伸びについては、都道府県と市区町村の両方が独立して助成しているケースが増えていることを意味します。制度の重層化が進んでおり、利用者から見たときの実質的な受給可能額が上がる自治体が増えていると読めます。

チャーミングケアの活動の軌跡

2022年:全国調査と厚生労働省への要望書提出

2022年10月、チャーミングケアは全国の市町村で行われているアピアランスケア支援事業の独自調査を実施し、その結果をもとに厚生労働省宛に「がん対策推進基本計画策定 子どものアピアランスケアに関する要望書」を提出しました。

要望内容は次の3点です。

1. 国主体での実態調査を行い、現状把握を行うこと

2. 自治体ごとの施策ではなく、国としての施策として支援事業を行う体制づくり

3. 小児がん患児への活用配慮の検討

この要望書提出をきっかけに、こども家庭庁設立準備室、厚生労働省、複数の議員との対話の機会をいただきました。行政への陳情については、子ども支援ネットワーク様にご尽力いただきました。

2023年3月には、自民党女性局政策ミーティングにて、各市区町村におけるアピアランスケア助成事業の動向に関する研修会を行いました。

2023年:小冊子制作と全国配布、復学支援への展開

要望書の提出後、私たちにできる次の一手として、情報の集約と発信を目的とした小冊子「子どものアピアランスケア」を制作しました。クラウドファンディングとラッシュジャパン合同会社様のご支援により、全国1,741市町村の健康増進課・保健所・教育委員会宛に約2万5千部を無償配布することができました。

小冊子制作のためのヒアリング調査を進める中で、子どものアピアランスケアの困りごとが最も顕在化する場面は「復学時」であることが分かってきました。この気付きから、小冊子の第2弾として「病弱児の復学支援について考える」を制作し、多職種によるサポートマップと当事者のエピソード漫画を掲載しています。

小冊子の制作にあたっては、次の専門家の方々にご協力いただきました。(肩書は取材当時)

・ 松本公一先生(国立成育医療研究センター 小児がんセンター長)

・ 鮫島舞先生(ハワイ大学公衆衛生大学院 小児科医)

・ 副島賢和先生(昭和大学大学院保健医療学研究科准教授 学校心理士スーパーバイザー)

・ 宮村能子先生(大阪大学医学部附属病院 小児科医)

・ 分田貴子先生(東京大学医学部附属病院 がん相談支援センター医師)

・ 松尾怜奈さん(遊育園こどもクリニック メディカルソーシャルワーカー)

2024年から現在:継続調査と政策協働

要望書の3点はいずれも直接的な政策実現には至っていませんが、対話を継続する中で、私たちにできることの方向性を明確にしてきました。

チャーミングケア主体での全国調査は毎年継続し、5年連続の定点観測データとして蓄積されています。単発の実態調査を超えた時系列データとして、政策提言や研究の場での価値を持つ資産になっています。

国立成育医療研究センターの松本公一先生とは共同研究者として関わっており、2026年11月には学会発表を予定しています。厚生労働科学研究の枠組みにおける、子どもの外見ケアに関する実態調査を行いました。

2026年7月には、文部科学省とこども家庭庁との面談を実施し、小児慢性特定疾病自立支援事業の周知広報体制の強化や学校での配慮に関しての事項などを求める申し入れを行いました。

今後について

5年連続の全国調査で見えてきたのは、アピアランスケア助成事業が「一部の先進自治体の取り組み」から「多くの自治体で当たり前の制度」へと変わりつつあるという事実です。同時に、依然として制度から取り残されている自治体があり、また助成の対象や範囲には地域差が残っています。

制度が広がったからこそ、次の課題として「制度の質」──対象年齢、対象品目、申請の容易さ、周知広報の徹底──に焦点が当たる段階に来ています。子どもへの活用配慮という、要望書の3点目として挙げた課題は、依然として未解決のままです。

そして毎年調査を続ける中で、私たちが強く感じているのが、申請そのもののしにくさです。担当部署は年度ごとに変わることがあり、掲載ページのURLも変更されて過去のリンクが切れる。都道府県と市区町村の要件を突き合わせて自分に該当する助成を把握するには、複数のページを横断して読み解く必要があります。前年の調査記録を持ち、毎年同じ手順で追跡している私たちですら、1自治体あたり5〜7分かけて確認と精査を行っています。制度の存在は知っていて、専門的に調べる立場にある私たちでこの時間がかかるということは、初めて情報にたどり着こうとする利用者にとって、負担になるということは想像に難しくありません。

助成事業の実施率が80%に達した今、次に問われるのは「どのように必要な人に情報を届けるか」だと考えています。5年連続の全国調査で蓄積してきたデータと、現場で見えてきた実務的な課題を踏まえ、情報にたどり着きやすい形での発信のあり方を、次の取り組みとして構想しています。

6年目の調査に入ります。文部科学省・こども家庭庁・厚生労働省、そして各自治体、研究者、当事者と家族の皆様と、引き続き丁寧に議論を重ねながら、必要な人に必要な情報が届く状態づくりに取り組んでいきたいと考えています。