商品・調査・当事者の声から支援を考える
小さすぎる市場では、ニーズがあっても商品化されない
チャーミングケアの原点は、代表の家族が小児がんの治療中に必要となったCVカテーテルカバーです。手術の前夜に用意するよう言われたものの、市販品はなく、保護者の手作りが前提。付き添い入院中の家族が、材料や型紙を探すところから始めなければならない状況でした。
同じ思いをする家族を減らすため、使用経験のある当事者・家族に聞き取りを行い、病院ごとに異なる指示へ対応できる製作キットとして販売を始めました。これが、チャーミングケアの活動の出発点です。
メーカーへ製品化を相談した際に返ってきたのは、『子どもだけでは市場が小さく、開発費に見合わない』という答えでした。必要性が低いのではありません。必要とする人数が少なく、年齢や体格、病院の方針によって仕様も細かく分かれるため、一般の市場では成立しにくいのです。
この『市場が小さいから生産されない』という構造は、ケア用品だけの話ではありません。小児用医薬品のドラッグラグ・ドラッグロスにも通じます。一枚のカテーテルカバーから見えてきたのは、個人の工夫に押し戻されている小児医療の課題でした。

物品購入補助金だけでは、アピアランスケアにならない
チャーミングケアは2022年から、全国の市区町村が行うアピアランスケア支援事業について独自調査を続けています。助成を実施する自治体は増えました。しかし、小規模な物品購入補助が市区町村単位で実装され始めたことと、アピアランスケア全体の支援が進んだことは同じではありません。
対象品目、金額、申請方法、担当窓口は自治体ごとに異なります。制度があっても知られていなければ使えず、対象になっていても子どもの利用を想定した案内がなければ届きません。そして、外見の変化に伴う困りごとは、物を購入できれば終わるものでもありません。
それゆえチャーミングケアでは、自治体調査、担当窓口の整理、子どものアピアランスケア小冊子の制作・配布、当事者家族への聞き取り、復学に関する発信、国や関係機関への要望を重ねてきました。2025年には、国立成育医療研究センターと協働し、小児におけるアピアランスケアの意識調査も実施しています。
数字を増やすことではなく、数字の外に残っている困りごとを見つけること。それが、チャーミングケアの調査の役割です。
アピアランスケアに必要なのは、「もの・こと・配慮」
自治体によるウィッグやケア用品等の購入費助成は、経済的な負担を軽減する大切な支援です。一方で、物品を購入するための補助金が増えることだけで、アピアランスケア全体が充実したとは言えません。
必要なのは、本人に合った帽子やケア用品などの「もの」だけではありません。自分に合う方法を知ること、相談すること、選ぶこと、周囲へどう伝えるかを一緒に考えることなどの「こと」も必要です。
さらに、学校生活や行事、友人関係、外出などの場面で、本人の希望に応じて参加方法や環境を調整する「配慮」も欠かせません。
補助金があっても、本人に合う商品がなければ選べません。商品を購入できても、学校で使用しにくかったり、周囲の理解が得られなかったりすれば、生活上の困りごとは残ります。反対に、本人が特別な対応を望んでいない場合には、周囲がケアを押しつけないことも大切です。
チャーミングケアでは、アピアランスケアを物品助成だけで捉えず、「もの・こと・配慮」の三つが、本人の希望と生活に合わせて組み合わされる必要があると考えています。

行政研修会レポート:徳島県の研修で共有したこと
この循環から見えてきた論点を、医療・行政・教育・福祉など、子どもと家族に関わる方々へ渡すのが研修です。2026年8月、徳島県で行われた研修では、個別制度の解説に閉じず、子どもの生活のどこに課題が現れるのかなどを紹介しました。
- 外見の変化が、復学、学校行事、友人関係、外出などへ及ぼす影響
- 助成制度があっても、情報が届かなければ利用につながらないこと
- 子どもの年齢や発達段階、本人の希望に応じた関わりが必要であること
- 医療・行政・教育・福祉など、一つの領域だけでは対応しきれないこと
- 当事者や家族の声を起点に、必要な専門職や支援へつなぐこと
一つの職種や制度だけで答えを出すのではなく、困りごとを起点に必要な人と知識をつなぐ。その視点を共有する研修となりました。
制度や商品では見えない「生活の選択」を知る
アピアランスケアは、一般に、がん治療などに伴う外見の変化による苦痛を軽減するためのケアとして説明されます。一方、脱毛症は、治療に伴う外見変化とは背景が異なります。両者を同じものとして扱うことはできません。
それでも、脱毛症を経験した方の語りには、外見の変化とともに生活する人が、何を諦め、何を隠し、どのように周囲との距離を測っているのかを知る手がかりがあります。
今回紹介する動画では、脱毛症の当事者であるNPO法人ASPJの土屋さんが、ご自身の経験を語っています。学校生活、プールや修学旅行、仕事、恋愛、ウィッグの選択、周囲へ伝えることなど、外見の変化が日々の選択へどのように関わってきたかが、具体的に語られています。
これは、アピアランスケアの専門的な解説ではありません。しかし、制度の対象品目や助成額からは決して見えない、生活上の選択の話です。『本人は本当はどうしたいのか』『周囲の言葉や態度はどう受け止められるのか』『選べる環境をどうつくるか』を考えるために、ぜひご覧ください。
▶ 動画:https://youtu.be/VtS7AODpL2A?si=cG-IzTxrOtvgW8kA
▶ 参考資料:https://www.charmingcaremall.com/product-page/appearance-care-training-material
子どものアピアランスケアに関する研修・講演を承ります
チャーミングケアでは、当事者・家族への聞き取り、自治体調査、商品開発、復学支援等の実践をもとに、行政、医療、教育、福祉、企業等を対象とした研修・講演を行っています。
制度や物品の紹介だけではなく、外見の変化が子どもの生活や意思、人間関係、学校生活にどのような影響を及ぼすのかを、具体的な事例から考えます。
対象者や目的に応じて、内容の組み立てや専門家とのコーディネートも可能です。
- 行政・自治体職員向け研修
- 医療・福祉・教育関係者向け多職種研修
- 学校・教育機関向け講演
- 企業・団体向け勉強会
- 当事者・家族の声を踏まえた調査・企画協力
関連情報
チャーミングケアでは、子どものアピアランスケアに関する調査結果、自治体の担当窓口、当事者・家族や支援者へのインタビューなどを公開しています。今回の動画・資料とあわせて、必要な情報をご覧ください。